“女性の力を活かす”には、性的役割分担の意識を変えていく必要がある
奈良県こども・子育て推進アドバイザー(ジェンダー平等推進担当)を務める、株式会社ウィルラボ代表取締役の小安美和さん。兵庫県豊岡市、富山県南砺市などの自治体や企業でアドバイザーや女性リーダーの育成を担っている。
「奈良県は女性の就職率が47位なのですね。これは女性の力を活かしけれていない、という課題を意味しています」その理由のひとつに「奈良県が大阪や京都で働く人たちの、ベッドタウンであること」が挙げられているそう。
「父が転勤族で、私が生まれたときは大阪勤務で住まいが橿原市でした。今も、そういうご家庭は珍しくないと思います。父親の勤務時間が長いと、母親が働く事が難しくなり、家事育児負担が増える傾向があります。必要に迫られている部分があるとはいえ、この性別分担を変えていくことが、女性の力を活用するためには欠かせません」
小安さんが橿原市で過ごしたのは、幼少期まで。その後は海外を含めて各地で暮らした。2017年の起業前はリクルートジョブズで執行役員を務めていた。
「リクルート時代に、『子育てをしながら働きやすい社会』を目指すプロジェクトに従事していました。その中で『国や自治体と連携しないとできないことがある」と感じるようになったんです。
でも、それはリクルートにいては実現が難しかったんですね。そこでウィルラボを立ち上げたんです。

家族のカタチが多様化していることをまずは知ってほしい
女性たちが自分の生き方を考えるにあたって「俯瞰(ふかん)してみることを意識して欲しい」と小安さんはいいます。
「例えば、現在の日本の世帯構造でもっとも多いのが『単独世帯』なんです。『夫婦と未婚の子ども』の世帯は約26%。今や、ひとり暮らしがマジョリティで、日本の伝統的な家族像とは異なる現実がある。そういうことを知ると、意識も変わってくると思うんです。」
一人ひとりが「自分がどう生きたいのか」を考えるときに、直面するのが同調圧力。誰かとの比較や”当たり前”というムードに押された経験は誰にでもあるだろう。
ジェンダーギャップ指数の順位は146ヵ国中、118位(2024年)の日本。多くの女性が、さまざまなシーンで”モヤモヤ”を感じた経験があるはずだ。
「ジェンダーギャップって私は『不条理』だと思うんです。だから、気持ちがモヤモヤするし、そういうときに『何がおかしいのか』を考えることを根付かせたいです」
しかし、現実には『おかしい』と声を上げると、『そういうものだから』といさめられていまうことも少なくない。
「そういうときは、統計やデータなどを調べながら、理論的に声を上げることが大切ですね。根拠をしっかり言葉にすること。そうすると、人を巻き込むこともできるんですね。共通のテーマで『おかしいよね』と思っている人たちが連携していったら、大きな力になって社会を動かす力になることを、
ジェンダー平等1位のアイスランドの女性たちによるストライキ『女性の休日』が実証してくれているんです」
1975年に発生したこのストライキは、男女の金銭格差にたいする講義として始まったのだそう。
「女性人口の9割が参加したのは、1975年のこと。2023年は10万人が参加したとされています。
男女の賃金格差は日本は77%、アイスランドは10%を切っています。それでも、『男女が平等になるまでやり続ける』と毎年、行われています。2023年の参加者の中には、当時の女性首相もいました。
市民も政治家も連帯することの大切さを物語っていますよね」
今年10月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3日間、日本女性会議が橿原市で開催される。
「日本国はじまりの地から未来へ」がてーまのこの大会。小安さんもファシリテーターとして登壇する。
「ジェンダー平等について、みなさんと一緒に考える機会にしたいと思っています。ぜひ足を運んでくださいね」


【日本女性会議2025橿原】
開催日:2025年10月3日(金)~5日(日)
オフィシャルHP:https://joseikaigi-kashihara.jp/
PRiSM9号(2025年2月10日発行)


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