「ローカルねっと」編集部が、この度橿原市議会政治倫理審査会で公表された案件について、指摘を受けた谷井おさむ議員に取材を試みました。
まず初めにこの度の結果についてどのようにお考えでしょうか?
谷井議員
私が橿原市政治倫理審査会において、橿原市政治倫理条例第4条第1項違反とされたこと、そして12月議会において「議員辞職勧告」を受けたことについて、厳粛に深く受け止めています。このような事態に至ったことを真摯に反省し、市民の皆さまの信頼を取り戻すため、これから誠心誠意努めてまいります。
そのうえで、今回の経緯や私自身の考えについて、お伝えさせていただきたいと思います。
まずどのような経緯で橿原市放課後児童クラブ運営協議会の委員長に就任されたのか?
谷井議員
令和3年6月から令和6年3月まで、私は橿原市放課後児童クラブ運営協議会の委員長を務めました。平成5年以降、核家族化や共働き家庭の増加に伴い、市内各地域で学童保育所が設立されました。そして平成27年4月に橿原市、保護者、支援員の三者で構成する「橿原市放課後児童クラブ運営協議会(運営協議会)」が発足しました。
この役職に就任した経緯は、私の子どもが通う畝傍東放課後児童クラブに市内12校区の保護者会を取りまとめる「橿原市放課後児童クラブ保護者連絡協議会(以下、保連協)」の会長が輪番として回ってきた際に、その担い手がおらずに保連協会長を務めたことが始まりです。
就任の前年、保連協会長予定者の時に、運営協議会の前任委員長が今年度限りで退任することとなり、事務局より委員長職を引き受けてほしいと打診がありました。この時、議員である私が委員長を務めること、報酬をもらう事について不安がありましたので、事務局を通じて橿原市にも確認を取っていただき、問題ないとの判断を受けて就任に至りました。その後、総会等の決議を経て正式に委員長職に就任しています。
議会での指摘と政倫審の判断についてどのように感じておられますか?
谷井議員
令和6年3月の予算委員会において、私が運営協議会の委員長についている事に対し、政治倫理条例に違反する可能性があると指摘され、報酬の件が問題になりました。
政治倫理審査会では、財政援助団体である運営協議会から報酬を受け取る行為が「市民全体の代表として社会的な信用を失墜させるような一切の行為」「不正の疑念をもたれる恐れのある行為」に該当すると判断されました。
政治倫理審査会の判断は真摯に受け止めていますが、その判断に至る審査会の内容や要点などは知りたいと思います。
市役所から支払い手続きの過程で議員の名前の入った書類が出てくるが、指摘はなかったのか?
谷井議員
委員長職に就いていた33か月間において、就任および報酬については、就任前に関係団体に確認を行っております。また、運営協議会の構成団体の一つである橿原市、その担当課や監査機関から特段の指摘を受けることはありませんでした。
市議会議員が兼ねている自治会長や消防団、他の役職でも報酬は出ている可能性がある。橿原市議会は一律歳費以外の報酬を受け取ることを禁止しているのか?
谷井議員
橿原市議会では一律に報酬を受け取る事は禁止にはしていません。
その点について、私には政倫審の判断に3つの疑問が残ります。
ア 自治会長や消防団、他の役職でも報酬が出ている可能性がある。他の公金はどうなるのか。
イ 就任前から規約にて規定され、権限も決められている委員長の報酬が、「不正の疑念をもたれる恐れのある行為」に該当するのか
ウ 政治倫理審査会は運営協議会の事務手続やフローを確認したのか
アについて、政倫審からの報告書には、委員長報酬の原資には、公金(税金)が含まれており、議員報酬以外の公金(税金)を受け取っていたことになる。委員長報酬が定額であったとしても、問題は報酬金額の多寡ではない。その時に他の役職はどう判断するのか。もしこのまま条例を解釈すれば他にも政治倫理条例に抵触する団体が出てきます。
次にイ.ウについて、私が受け取っていた月額30,000円が、政倫審で違反とされた「その職務に関し不正の疑念をもたれる恐れのある行為」という部分に該当するという判断が妥当であったのかどうか。
運営協議会委員長には多くの職務がありますが、重要な部分は、すべて規約、規則等で定められており、委員長個人が好きかってできるようできるようなものではありません。何重にもチェック(決裁)がある組織で、委員長個人が自分勝手に物事を行う事はできない組織体制になっています。
にもかかわらず、単に財政援助団体の長として定額の報酬をもらっていたことに問題があったと判断したことには、審査会が単に長という役職に就いているだけで判断したのか、業務の内容をしっかりと確認したのかどうか、不安がのこってしまいます。
東京都の立川市では議員が担い手は不足する財政援助団体の長に就任する事ができるよう条例改正しました。人口減少である現代において担い手の確保は大きな課題です。
また、「その職務に関して、不正の疑念を持たれる恐れのある行為」とはどのようなものが該当してくるのか具体的に示していただきたいと思います。でなければ、「抽象的なおそれ」も含まれてしまうと、この規定は見かたによってどこまでも広がってしまいます。それは政治倫理条例を好きに運用できる危険性を抱えています。
議員辞職勧告の重みと判断の在り方についてお考えをお聞かせください
谷井議員
12月議会で私に対し「議員辞職勧告」の決議がなされました。これは最も重い勧告であり、議員としての在職継続が妥当でないと判断された場合に下されるものです。
事例としては、不正であったりハラスメントであったり、議会が、対象議員が在職すべきではないほど重いものと考えていることを対外的に示さなければ、議会の損害から 回復できない場合において議決されるものです。
『特定議員が「在職すべきでない」と考えることの重さについて、地方自治法上の 懲罰に関する事案ではありますが、「地方公共団体の議会の議員は、憲法 93 条に基づきその住民から直接に選挙されたものであり、 議員の除名はこの住民の選挙を否定する結果となるものであるから、除名はそれに相応する重大な事由がある場合でなければ許されない というべきである。」と 判示した事例 があります 。(篠山町議会事件 大阪高裁判決 平成 10 年 12 月1日)』(立川市議会議員 政治倫理条例 逐条解説 令和5年11月)
しかし、私が行った行為がこのような重い措置に値するかの検証が十分に行われたどうかは各議員の判断になるので私にはわかりません。
議会は民意を代弁する場であり、議員一人ひとりには冷静で公平かつ客観的な判断が求められます。今回の決議は、議会としてのあり方や条例の適用方法について再考を促すきっかけになってほしいと考えています。
最後にお伝えしたいことはありますか?
谷井議員
改めて、今回の政治倫理審査会、橿原市議会の判断については真摯に重く受け止めています。
そのうえで、今回の議論を通じて、今後の政治倫理審査会の判断と議会運営や条例の運用がより公正で透明性の高いものになり、各議員が議会の損害と損害の回復の均衡に注意を向け判断をし、橿原市政治倫理条例が市民利益の向上につながっていくことを願います。
取材:ローカルねっと取材班
谷井おさむ
【略歴】
平成5年 和歌山県伊都高等学校卒業(水泳部主将)
平成6年 宝塚造形芸術大学を中退
平成7年 大手外食フランチャイズチェーン入社
平成15年 飲食関連会社設立 代表
令和元年 橿原市市議会議員補欠選挙当選 一期目
令和3年 橿原市市議会議員選挙当選 二期目
【役職】
市スポーツ施設の活用及び整備等に関する特別委員会副委員長
橿原市土地開発公社 理事
畝傍中学校PTA会長
橿原市水泳連盟 相談役
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