「声は、誰かの支えになる」——FMまほろばパーソナリティ・松原まつおさんが語る“ラジオの魅力”と“地域発信の力”
■ ラジオが好きだったあの頃のまま、大人になってマイクの前へ
「僕、深夜ラジオで育った世代なんです。伊集院光さんとか、ナインティナインのオールナイトニッポンとか、学生時代はずっと聞いてました。ラジオって、顔も知らない誰かと心を通わせる、そんな不思議なメディアだと思っていて。まさか自分が話す側になるなんて、当時は夢にも思わなかったですね」
そう語るのは、「FMまほろば」でパーソナリティを務める松原まつおさん。普段は会社員として働きながら、夕方の番組『たわらもとサンセット』を※“ワンオペ”で制作・放送している。
「このFMまほろばでは、ほとんどのパーソナリティがボランティア。僕も地域に何か貢献したいなって気持ちで応募しました。高校卒業後に音響の専門学校へ進んで、PAの仕事もしてたので、少しは役に立てるかなと」
応募時には、番組のパイロット版を自ら制作。ジングルや構成もすべて自作し、採用が決定した。「どうせなら、やれること全部やってみよう」と持ち前のバイタリティを見せた。

■ ラジオが好きだったあの頃のまま、大人になってマイクの前へ
「最初はね、流行の話題とかを詰め込んで、情報バラエティを作るつもりだったんです。でもある日、『田原本でこんなイベントがあって行ってきたんですよ』って何気なく話したら、リスナーさんから“今度は教えてください”“行きたい”ってメッセージが来たんです。それがすごく嬉しくて」
松原さんの番組スタイルは、次第に「自分の目で見た地元のこと」「家族のこと」「日々の小さな気づき」を話す形へと変わっていった。
「この間は、おんだ祭りの話をしました。Facebookでは華やかに紹介されていたんですけど、実際に行ってみたら、地元のおばちゃんたちが本当にがんばっててね。そういう“現場の温度”を伝えられるのが、ラジオの良さかなって」
「ラジオって、“一対一”のメディアなんですよ。喋っている僕は、マイクの先に何千人いると思って話す。でも、聴いている人は大抵ひとり。だから、どこかで『あ、この人、俺のこと喋っているかも』って思ってもらえるように意識してます」

■ ワンオペ放送の現場から——“喋る・録る・流す”を全部ひとりで
FMまほろばでの番組制作は、まさに“一人三役”。
「ディレクターも、ミキサーも、パーソナリティも、全部自分です。最初は“さわる時間くらいあるかな”って思ってたんですけど、初日からぶっつけ本番でした(笑)」
「でも、元々音響の仕事をしていたので、機材は触れました。まあ喋ってるとテンション上がっちゃって、後で“あー、違うこと言ってる!”ってなることもあるんですけど(笑)」
そんな中、松原さんが最も力を入れた企画が「年末ラジオドラマ」の放送だった。
「タイトルは『ワタシ的相対性理論』。中学生の恋と別れを、相対性理論をモチーフに描いたSFっぽい青春ドラマです。脚本も自分で書いて、声の録音は一人ずつ、編集も全部自分で……正直、死にかけました(笑)」
それでも、多くのスタッフやパーソナリティが参加し、完成させたこの作品。「将来は演劇部の高校生たちと、また何か一緒にできたら」と目を輝かせる。

■ 「知らないおじさん」でいい。誰かの“よりどころ”になれたら
「僕、小1の息子がいて、最近また赤ちゃんも生まれたんですよ。そんな家族の話も、最近は番組でよくしています。子育て中の方や、ちょっと孤独を感じている人にも、何か届けばいいなって思ってて」
松原さんは、番組の最後にこう語りかけるようにしている。
「何かに悩んでいる人、親にも先生にも言えないようなことを抱えている人、そんなときは“知らないおじさん”の僕のところに来てくれていいよって。解決できるかわからないけど、一緒に考えることはできるから」
地元で育った経験、父としての視点、音響の専門知識、そしてラジオへの深い愛情。そのすべてが、松原さんの“声”の背景にある。
※ワンオペ:番組の構成、エンジニア、パーソナリティを全て一人で行う。

【番組情報】
番組名:たわらもとサンセット
放送日時:毎週水曜日 17:00~18:30
放送局:FMまほろば(79.5MHz)
パーソナリティ:松原まつお


とてもためになりました。
子育て大変ですが、ガンバってください。